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福岡県―江蘇省友好都市30周年を迎え、経済から文化まで交流を促進
2022-02-10 10:55

新型コロナウイルス感染症の拡大で国際的な往来が激減するなか、日本にある各国の団体などはオンラインを駆使し、できる限りの協力、交流を進めており、中国駐福岡総領事の律 桂軍氏は2021年、九州・山口・沖縄と中国の間の絆が強化されたと評価する。九州と中国との関係や中国国内の政治経済状況などについて、律総領事に話を聞いた。

深まる九州と中国の絆

――昨年の総領事館の活動をどう評価しますか。

律桂軍氏(以下、律) 昨年の活動を通して、中国と日本、とくに九州・山口・沖縄(以下、九州)との間で5つの絆がさらに強化されたと実感しています。第1に中日友好の感情面での絆です。新型コロナウイルス感染症の発生以降、相手側の問題についてお互いに我が身に生じたことのように思い、惜しむことなく支援の手を差し伸べました。政府・自治体、企業の間では多大な金額に相当する物質面での支援が行われたほか、学生も募金活動を行いました。これらの活動は両国国民の間で記憶され、語り継がれていくものと思います。

第2に経済面でのWin-Winの協力という絆です。コロナにより一部のサプライチェーンが分断され、世界的にインフレが生じました。そのような悪条件のなか、中国と九州が協力した結果、双方の貿易・投資はむしろ上向きました。中国は依然として日本および九州経済圏(九州・沖縄・山口の9県)にとって第1番目の貿易相手です。

2021年、中日間の輸出入総額は前年比17.1%増の3714億㌦に達し、再び史上最高を記録しました(中国税関)。2021年、日本の対中直接投資も増えており、前年に比べて16%増の39.13億㌦(実行額)になりました。通年で中国で新設した日系企業は前年比24.9%増の998社、日系企業累計は5万4631社で、投資実績は1229.88億㌦に上っています(中国商務省)。2021年、九州経済圏と中国の貿易総額は前年比14.4%増の3兆4456億円となり、九州経済圏の輸出入額全体に占める割合は21.2%に上っています(門司税関)。

第3に地方交流の友好都市の絆です。九州と中国の間には50組の友好都市関係が締結されており、かつ多くは中国側にとって最初の友好都市関係です。たとえば、広州市―福岡市、大連市―北九州市、青島市―下関市、(安徽省)合肥市―久留米市などが挙げられます。

私は昨年、福岡―江蘇友好桜花園(江蘇省南京市)設立25周年、合肥市・久留米市友好都市40周年などの記念活動をはじめ数多くの活動に現地またはオンラインで参加しました。それらの活動を通して、中日双方の間で地道な草の根の交流活動が展開されてきたことに感銘を受けました。多くの活動はオンラインによるものですが、現在できることが最大限行われており、経済・貿易面から文化・スポーツ面まで幅広く交流が行われ、双方の市民の間で広く歓迎されていると実感します。合肥市と久留米市は今後交流を強化する覚書に署名しました。

第4に青少年、文化面の絆です。オリンピックをテーマとする第24回中日青少年書画交流大会などが開催され、心の琴線に触れる多くの作品がありました。両国の青少年は書道・絵画を通して交流をすることができます。両国には漢字という共通した文化があり、それを用いて希望や夢などを表現していると思います。

第5に中日地方発展協力モデル区という絆です。2020年、中国政府は6つの中日地方発展協力モデル区を設置しました。総領事館は大連市、青島市、九州経済界らと協力し、大連と青島のモデル区の説明会を開催したほか、青島市に設置された上海協力機構の地方経済貿易協力モデル区に関して、九州との物流マッチングに関する説明会を開催しました。これらのイベントを通して、双方の企業間での連絡チャネルが形成されてきています。

物流協力では、今後協力を強めるために協定や覚書を締結しようという話も出てきており、日本とヨーロッパまでつながる協力メカニズムの構築も検討されています。

中国は引き続き対外開放を堅持

――中国国内についてみてみると、中国共産党が歴史決議を採択するなど大きな動きが見られました。

律 昨年は中国にとって一里塚の年になったといえます。政治面では中国共産党は建党100周年を迎え、小康社会(いくらかゆとりのある社会)の建設という目標を実現しました。そして全面的に社会主義現代化国家の建設をスタートさせ、二つ目の百周年の奮闘目標に向け新たな船出をしました。11月に開催した中国共産党第19期6中全会のコミュニケにおいて、100年間の重要な成果と歴史的経験を全面的に総括し、私たちは如何にして成功できたのか、これからどのようにすれば引き続き成功できるのか、深く分析しました。中国共産党の「第3の歴史決議」となる「党の百年奮闘の重要な成果と歴史的経験に関する中共中央の決議」は、中華民族の偉大な復興のためのガイドラインとなるでしょう。

6中全会は平和的発展を強調すると同時に、今後さらに大きな範囲、深いレベルで対外開放の枠組みを形成していくことを強調しています。今後、中国は各国に対して重要な経済発展の機会を提供していくでしょう。

経済面では、昨年は第14期五カ年計画(21~25年)のスタートの年でもありました。中国はコロナの感染拡大防止をうまく行い、良好なスタートを切りました。中国は経済の発展および感染対策の両方において世界の前列に位置するという自信があります。科学技術の水準を飛躍的に高め、サプライチェーンはより強靭なものへとなりました。昨年の中国の経済成長率は8.1%で、“比較的高い成長率―比較的低いインフレ率―比較的多い就業数”という良い組み合わせを達成しました。

全体的に見れば、中国経済には発展のための多くの有利な条件があります。経済の強靭性、潜在力、完備された産業体系、豊富な人的資源、インフラの利便性の高さ、世界有数の大きな市場があります。加えて、中国の政策金利は比較的高く(事実上の政策金利とされるローンプライムレートの1年物は3.8%)、財政上の余力もあるため政府には金融・財政政策上の手段が十分にあります。このような条件から、政府は強いリーダーシップを発揮できると信じています。

率直にいえば、中国経済はエネルギー不足の問題、多くの国などにおけるオミクロン株の爆発的感染などの問題がサプライチェーンに影響をおよぼしかねず、不安定さも抱えていることも認識しています。ただ、全般的にいえば、引き続き回復基調にあり、発展する勢いがよく、長期的に上向きというファンダメンタルズは変わらないと思います。

また、中国は貧困問題を全面的に解決でき、中間層の人数を増やしています。農村や地方も発展させながら、国全体として成長させ、多くの地域の生活レベルを高め、収入を増やしたことにより、かつて貧困地域とされていた多くの地域が貧困状態から脱出することができました。中間層は現在の約4億人から2035年には約8億人に増えると見込まれています。

日中両国はグローバル、相互補完的な視点で協力を

律 経済・貿易面ではRCEP(地域的な包括的経済連携協定)が1月1日に発効したことが非常に大きいです。中日両国にはFTAの枠組みがありませんでした。将来的にメンバー間で約90%の品目において関税が撤廃されます。国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算によると、日本は2019年比で輸出入総額がメンバーとの間で約420億ドル、対中国輸出が約119億ドルの増加がそれぞれ見込まれるほどで、最大の受益国と見なされています。

RCEPはアジア太平洋地域の経済大国2カ国である中日両国間で初の自由貿易協定となります。日本の対中国輸出における工業製品のゼロ関税品目の占める比率は、RCEP発効以前の8.4%から今年25%に引き上げられ、将来的には86%に引き上げられます。これらの措置、規定により、両国間の輸出入の規模を拡大することができます。日本、とくに九州は自動車部品、鉄鋼などの輸出において大きな恩恵を受けるでしょう。加えて、RCEP加盟国が1つの経済圏となり、同じルールのもとで経済活動を行えるようになるため、第三国において両国が合弁会社を設立し、協力しやすくなります。現在のところ九州の企業が関わる具体的な事例の情報は聞いていませんが、今後生まれてくるでしょう。

――昨年9月、TPP加盟を申請しました。以前から交渉を行っている日中韓FTAについても、中国はTPP並みの高水準の関税撤廃、障壁の撤廃などを考えているのでしょうか。

律 RCEPは経済自由化の枠組みに関して、二国間のレベルだけではなく、多国間のレベルでも非常に大きな意義をもちます。より開放レベルの高い中日韓FTAの締結は今後到達すべきステップとなります。中国は日中韓FTAを意識したうえで、このたびTPP加盟を申請しました。これは中国がより深いレベルへの開放政策を進めるという決意の表れです。中国は日本、韓国との間でFTA交渉をおよそ10年間行っており、さらに進める意欲をもっています。

国際社会では、コロナなど感染症の拡大予防、地球温暖化対策、サプライチェーンの持続、デジタル技術によるイノベーションなどの重要性が日増しに増しています。なぜならこれらは人々の健康・生命、さらに人類の安全、発展の前途に関わっているからです。中日両国ともこれらを重視しており、中国はワクチン開発、感染症コントロール、デジタル経済、新エネルギーなどの点において成長がかなり早く、世界でトップランナーの国の1つではないかと思います。

両国は双方の強みを意識して相互補完的な協力を行うことができます。すでに一定の成果を上げていますが、今後、友好都市、青少年、文化・スポーツ、経済・貿易などの諸分野の交流と協力を推進、深め、さらに高いレベルに引き上げていくことが非常に重要であり、今年はそのための1年にすべきだと思います。 

地域交流、相互認識を深める

――友好都市の交流では、今年、福岡県―江蘇省友好都市30周年を迎えます。スポーツ面では、北京オリンピックが開催されています。総領事館として地方交流をどのように進めていきますか。

律 東京オリンピックはコロナという前代未聞のプレッシャーのなか、各界の人が血のにじむような努力を重ね、成功裏に行われました。これは日本およびオリンピックの歴史において、今後ずっと語り継がれていくでしょう。

今年は、中国と日本・九州との協力関係において、非常に大きなチャンスの年です。国交正常化50周年であり、江蘇省―福岡県のほかには、山東省―山口県、広西チワン族自治区―熊本県の40周年など13組が節目の年を迎えます。

総領事館としては年間を通じて国交正常化50周年および友好都市関係の節目を祝賀する一連の活動を行う予定であり、関連団体らと協力して比較的大規模なイベントもいくつか企画しています。地域交流では、九州地域の中日友好大会を企画しており、各県の日中友好協会、中国側の友好都市の関連団体がオンラインで一堂に会して、交流を行います。文化交流では、北京オリンピックをテーマとする中日青少年書画巡回展を企画しています。経済交流では、新春中国経済セミナーの開催を企画しているほか、中日地方発展協力モデル区の交流を推進していきたいと思っています。これらを通して、両国の友好の雰囲気を盛り上げます。

――九州・山口の市民へのメッセージをお願いします。

律 3点申し上げます。第1に、今年は国交正常化50周年ですので、ぜひ日本国内の皆さんも、中日の友好協力関係を大事にし、一緒に発展させることを望んでいます。この約50年、紆余曲折がありましたが、全般としては平和・友好・協力という方向を堅持しており、双方に重要な利益をもたらしています。日本でも国益の重要性が強調されますが、中日友好協力関係の維持と発展はまさに日本の国益に適うものだと思います。50周年という節目の年を迎えるにあたり、双方がその好機を逃さず、友好協力を絶えず推進すべきであり、個別の問題によって日中友好という大局に影響をおよぼすのは避けるのが望ましいと思います。

第2に、客観的に中国を認識してほしいということです。今後50年の中日関係を展望するにあたり、大事なのは客観的に相手を認識することであり、絶えず変化している対象を客観的に認識することが求められます。中国には大市場があり、中国との協力を深めることは発展にとっての大きなチャンスです。今後の日本経済にとって、中国との経済協力の重要性はさらに高まります。政治的な問題が大きくなって経済協力にマイナスの影響をおよぼすことを危惧しています。中国は平和的、開放的な発展を堅持し、人類の運命共同体の構築に努めています。現代化国家の建設の過程において、中国は日本と協力を強め、共に繁栄する道を歩んでいくことを望んでいます。中国の繁栄は日本の発展にとってチャンスであり、脅威ではないという共通認識を固めてほしいと思います。

第3に、中国共産党について客観的に認識してほしいということです。中国を認識するカギは中国共産党を認識することです。百年来、中国共産党の強いリーダーシップのもと、中国はアヘン戦争以降の中国に対する侵略、植民地状態から脱出し、中国の国民は国家の主人公になりました。中華人民共和国が成立して73年となります。中国は共産党の強いリーダーシップのもと、急速な経済発展と、社会の長期的な安定という2つの奇跡を実現しました。中国は今後もさらなる発展を遂げ、国民の生活は絶えずよい方向に向かっていきます。対外関係においては常に世界のことを念頭に置き、終始世界の目線で人類に関心を寄せ、開放を堅持し、互恵関係を重視し、Win-Winを堅持していきます。


<プロフィール>

律 桂軍(りつ けいぐん)

1967年生まれ。99年中華人民共和国駐日本国大使館アタッシェとして着任。以後、中国外交部アジア局処長(課長)、駐日本国大使館参事官、外交部アジア局参事官、駐シドニー総領事館副総領事、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2020年6月、駐福岡総領事に着任。

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